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大石静氏講演会「テレビドラマの作り手として」

創立100周年記念・土曜講座23周年記念講演会


「テレビドラマの作り手として」

脚本家 大石 静 氏

 2025年4月19日(土)に、23回目となる土曜講座記念講演会を開催しました。2026年度に創立100周年を迎えるのに合わせて、100周年記念講演会としての位置づけもされています。
 本講演会は毎年、同窓会のご支援のもと運営されており、同窓会の皆様には厚くお礼を申し上げます。今年度は2024年の大河ドラマ『光る君へ』でも有名な、脚本家の大石静先生を講師としてお招きしました。以下、講演の中で印象に残ったお言葉を紹介しながら、講演の概略を掲載させていただきます。

【講演概略】

「オリジナルが書けてこそ一人前の脚本家」
 最近は視聴者の気を引くためもあり、漫画や小説などを原作にしたものが多いそうです。しかし、心に残る力強いドラマはオリジナルが多く、オリジナルの作品が書けてこそ一人前の脚本家であることを、強調されておられました。

「人間は思ったことの2割くらいしか表現していない、8割くらいは隠している。2割をセリフにして、8割を感じさせるのが脚本の難しいところ」
 脚本はほぼセリフのみで構成されています。心情を直接表現できる小説とは異なり、セリフだけで隠された心情を感じさせなければいけません。そこに、脚本の難しさがあるそうです。

「多くのスタッフ・キャストの力の結集として出来上がるのがテレビドラマ」
 ドラマは脚本をもとに、役者、演出、音楽、照明、編集などが加わって視聴者に届きます。同じ物書きでも、小説家は一人で完結する仕事ですが、脚本家はチームで仕事をすることに違いがあります。寒い日も暑い日も早朝から夜中まで、撮影に臨む役者やスタッフが「この台本ならどんな苦しい撮影も頑張ろう」と思い、士気を上げることも脚本家の役割だと考えておられるそうです。また、自分の書いた脚本がどのように料理されるかを待つスリリングな感じが好きで、大石先生は脚本家を続けていらっしゃるそうです。

「様々なものの見方を提示しなければ、メディアとしての存在意義はない」
 今のテレビは、わかりやすさ、角のなさ一色になってしまって、とても危険です。本来テレビは様々な意見を視聴者に届け、視聴者が独自の判断をする材料を届けることが使命であると、強く訴えておられました。

「既成の価値観を疑うまなざしと、矛盾に満ちた人間を立体的に表現していきたい」
 人の心の軸をゆさぶり、ドキッとさせ、視聴者の胸をたたきたい。人は必ずしも感情の通りに行動するとは限らず、矛盾に満ちた人間を立体的に描きたい。大石先生のドラマ作りへのこだわり、熱い情熱が伝わってきました。

「ローカルを知らずして真のグローバルはない」
 昨今、グローバルな意識を持つことの大切さがよく語られますが、一方で世界はローカル的なものを求めています。まずはローカルを大事にして、ローカルをよく知ってから、グローバルな人間になってほしいと、締めくくりのメッセージをいただきました。

そのほか、テレビドラマの作られ方、『光る君へ』に込められた思いやエピソードなど、さまざまなお話を伺うことができました。ご多忙の中、ご講演いただいた大石先生に、あらためて感謝申し上げます。