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活躍する同窓生に学ぶ:竹田賢氏(青山学院大学 経営学部教授)

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活躍する同窓生に学ぶ:竹田賢氏(青山学院大学 経営学部教授)


「継続は力なり」
~サプライチェーンの研究を通じ、社会の問題解決~

青山学院大学 経営学部教授
竹田 賢 (昭和61年卒)

青山学院大学
https://www.aoyama.ac.jp/


正月の箱根駅伝でいつも話題となる青山学院大学。今回は、出身大学の青山学院大学で経営学部教授をされている竹田賢さんにご登場いただき、お話を伺います。

滝学園時代、どんな生徒でしたか。
 私は、高校から滝学園に入学した、いわゆる外普組の学生でした。入学してまず驚いたのは、中学から入学した内普の学生は、中学3年生の段階ですでに高校1年生の数学を勉強し終わっていましたので、高校1年次の数学の授業はスピードがとても早く、授業についていくのに必死でした。数学のテストが合格点に至らないこともしばしばあって、早起きをして追試験を受けていましたね。授業後には、数学の青山先生のご自宅にうかがって、寺子屋形式で数学の勉強をさせていただいたことはとても印象に残っています。私の周りには、クラブ活動をしている人もいましたが、私は数学他、勉強に専念するために部活動には参加しませんでした。中学まで習っていたピアノも高校の段階で一旦終わりにしました。憧れだった滝学園に入学できたので、勉学第一で他のことは極力やらなかった学生でした。ただ、多くの優秀で活発な友達に恵まれ、色々なイベントに誘って貰って充実した学園生活を送ることができたと思っています。今でも医療分野の大学で教授をしている同級生とは年に数回食事をしたりして、高校時代の思い出話しをしています。

青山学院大学に在学中、経営工学を学ばれましたが、どんなきっかけで経営工学を専攻されたのでしょうか。また大学時代は、どんな生活でしたか。
 大学で勉強したかった領域は他にあったのですが、一浪した段階で他の学問分野も視野に入れて両方受験した方がいいとのアドバイスがあり、色々調べている中で目にとまったのが経営工学でした。企業が抱えている課題を工学的アプローチで解決するといった文理融合型の比較的新しい学問分野で、もともと目指していた分野とも、「困っている対象に対して救いの手を差し伸べる」といった点では共通していると思い、関東の大学を受験し、結果、青山学院大学理工学部経営工学科に進学することになりました。大学時代は、勉学もさることながら、音楽が好きだったので合唱団に入部しました。年末によく演奏されるメサイアを中心に、建学の精神であるキリスト教音楽に関わる曲を中心に歌っていました。アルバイトは教えるのが好きだったので、塾の講師と家庭教師をしていました。

いつ頃から、ロジスティクス(※1)やサプライチェーンマネジメント(SCM)(※2)について研究しようと考えられましたでしょうか。また、いつ頃から大学教員になろうと考えられましたか。
 私は、オペレーションズ・リサーチ(OR)(※3)という数学的手法を使って企業の課題解決に取り組んでいた教授の研究室に学部3年生から所属しました。たまたま、滝学園の近くにあった縫製工場と共同研究をされていて、教授に「滝高校は私の出身高校です!」と話をしたら、「一緒に工場見学に行きましょう」と誘っていただきました。江南駅から高校時代に通った懐かしい道を通り、学園の風景を見ながらその企業に行った記憶が残っています。その帰りに、教授が私の実家に立ち寄られ、「研究者の道を目指しませんか」との話題となりました。私自身、もう少しこの学問を究めたいという思いもあったので、将来の就職不安もありましたが、思い切ってその道を目指してみようと決意しました。大学院進学を契機に、金型メーカーとの共同研究をする機会に恵まれました。当時、多品種少量生産への移行期で、不要不急の製品在庫を抱えることなく多様な顧客ニーズに対応した製品を短いリードタイムで供給するためにはどうしたらよいかという、生産・在庫戦略が企業の大きな課題となっていました。私は、OR手法を駆使しながらこの課題に対する一つの解決策を提示し、博士号を取得することができました。また幸運にも、青山学院大学経営学部の物流情報管理を担当する専任教員の職に就くことができ、その時から本格的に生産や在庫の問題に加えて、物流問題も取り扱うようになり、ロジスティクスさらにはサプライチェーンマネジメントの領域で研究と教育を行うようになりました。

現在、経営学部で教鞭をとっていらっしゃいますが、経営学部においてサプライチェーンを学ぶ意義についてお聞かせください。
 経営学部は、企業や組織の運営、経営に関する知識やスキルを体系的に学ぶ学部です。企業を「どう動かすか」、「どう成長させるか」、「どう社会とつながるか」といった視点から、ヒト・モノ・カネ・情報といった限りある経営資源をいかに効率的かつ効果的に活用し、価値を提供するかを追求する学問です。原材料を仕入れて、製品を作り、顧客に届けるまでのモノの供給連鎖であるサプライチェーンをうまくコントロールことによって、企業の持続的成長や社会的価値を創造することが可能になります。ESG経営(※4)(環境・社会・ガバナンス)が求められる時代において、経営学部でモノの流れの管理をする『サプライチェーンマネジメント』を学ぶことは今後益々重要となるでしょう。サプライチェーンマネジメントがきちんと機能しなければ、我々の生活は成り立たなくなるということです。残念ながら、我々は、自然災害、パンデミック、戦争・紛争、事故や災害、サイバー攻撃、政治状況、法律変更、顧客の価値観の変化、少子高齢化というような混乱させる様々な要因が複雑に絡み合った予測困難なVUCA(※5)といわれる時代に生きています。このようなリスク(別の見方をすればビジネスチャンスでもある)に対して如何に俊敏に対応し、頑健性(がんけんせい)(持続可能性)の高いサプライチェーンを、AIなどのテクノロジーを活用しながらデザインすることが今後求められ、その役割を担うのは若い世代の皆さん達ですと鼓舞しています。ゼミに所属している学生には、産学連携を通して企業が抱えている問題の把握、課題設定、そしてその課題に対する解決策の提案と妥当性の検証といったことを体系的に学べる環境を提供しています。産学連携の取組自体は珍しいことではありませんが、私のゼミでは、学生と企業の方がともに同じ目線で議論しながら、一緒になってプロジェクトを進めている所に特徴があります。企業側にとってはとても負荷がかかりますが、それでもこれからの時代をリードしていくいわゆるZ世代の学生達のフレッシュな意見や考え方を聞いてみたいという強い動機があって成り立っています。学生も教科書には書かれていない企業の方の生の声を聞くことで、より身近でリアリティのある状況の中で学びを深めることができています。これまで取り組んできたテーマは多岐に渡りますが、例えば、規格外品の野菜はこれまで廃棄されていましたが、それを廃棄せず粉末にして付加価値をつけて再利用するスタートアップ企業と連携し、製品企画から販売までの一連のビジネスプロセスを設計・評価する取組を行いました。食品廃棄ロス問題は若い世代の学生に関心の高いテーマであり、このような社会課題を解決する新しいビジネスモデルを考える中でサプライチェーンやマーケティングについて深く探求する非常に意義のある取組でした。他には、物流の2024年問題に関連して、中長期的視点に立って持続可能なサプライチェーンを構築するにはどうしたらよいかを、誰もが知っている外食企業の方と一緒になって考えることも行いました。これらの取組は、学生にとって社会に出る前の貴重なビジネス体験になっています。このような活動に興味を示す優秀な学生が毎年多数ゼミに入ってくれており、私自身も柔軟な発想をもつ学生からたくさんの刺激をもらっています。

最近ですと、100年に一度と言われる産業・物流の大改革の時期を迎えています。社会人向け通信教育講座「Schoo」では、「サプライチェーンマネジメント基礎理論」を教えていらっしゃいますが、初心者が「サプライチェーン」について知る・学ぶには、どんなことから始めたらいいでしょうか。

 私がサプライチェーンマネジメントの授業を担当し始めたころは、正直、学生の関心はほとんどありませんでした。ただ、新型コロナウィルスによってマスクが全く手に入らなかった時期があったり、ワクチンの供給が遅れたり、気候変動の影響で農作物の収穫に影響が出て価格高騰や食品メーカー等がその対応に追われたり、米が店頭に並ばなくなって混乱する等、製品の流れに関係する話題は枚挙にいとまがありません。そのためか、このサプライチェーンに興味をもつ学生が着実に増えましたし、メディア等で『サプライチェーン』という言葉がよく使われるようになったことも、初心者が製品の流れについて知る機会が以前に比べてかなり増えていると思います。関心をもった話題に対して深く調べてみたり、検討課題の多い物流領域をターゲットに『サプライチェーン』について学び始めるのもよいのではないでしょうか。例えば、物流倉庫は、今やテクノロジーの塊で成り立っていてロボットなども活躍しています。また、ドローンなどの話題も物流に関連しますので、とても学際的で面白い分野だと思います。興味が沸くようであれば、拙著(せっちょ)ではございますが、『サプライチェーンマネジメント入門』をお読みいただければ、サプライチェーンについて少しはご理解いただけると思います。

趣味は、何でしょうか。何か今はまっていることはありますか。
 趣味は音楽を聴くことと、大学院時代に始めた少林寺拳法です。音楽はジャンルを問わず幅広く聴きますが、特にJ-POPが好きですね。特に、気分転換したいときには欠かせません。疲れやストレスがすっと消えていくような感覚になります。
 少林寺拳法は、体を動かすだけでなく、精神面の鍛錬にもなるところが魅力です。研究で行き詰った時など、道場で汗を流すことでリフレッシュできますし、礼儀や冷静な判断力も自然と身についた気がします。どちらの趣味も、日常のリズムを整える大切な存在になっています。

座右の銘は。
 ありきたりかもしれませんが、「継続は力なり」です。私が現在の職に就けているのも、様々な人からのアドバイスやサポートをもらいながら、自分自身でコツコツ努力してきたからだと思います。挫折しそうな時も多々ありましたが、諦めずに頑張っていれば未来は必ず開けると信じています。

滝学園の在校生、卒業生(二十歳代の若手)に対し、今後の進路を決めていくうえで、さらには、生きていくうえでの助言がありましたら。
 大学進学にあたっては、偏差値や大学名を基準に選択することも多いですが、やはり自分がどんな事を探求したいかを明確にし、それを満たしてくれる大学かどうかをしっかり見極めてほしいと思います。今は、どの大学も広報活動に力を入れていますので、多くの情報はインターネットで検索すれば得られます。ぜひ、様々な視点から将来の可能性を模索し、悔いの残らない大学選びをしてください。
 先にも少し触れましたが、今の時代は様々な要因が複雑に絡み合っているため、企業が抱える問題の解決には、異分野領域の専門家が集まって知恵を出し合うことが重要となります。そのため、自分の専門領域とは異なる人との交流を積極的にしてください。革新的なイノベーションは専門分野が違う人との何気ない雑談から生まれることも指摘されています。様々な国の多様な価値観をもった人との交流もとても大事だと思います。そして、今の時代はSNS等がコミュケーション手段の主流になっていますが、是非、対面でのコミュニケーションを大切にしてほしいと思います。
 優秀な学生が集う滝学園の知のネットワークで、世界で活躍する人材が数多く輩出されることを期待しています。

※1 ロジスティクス
ロジスティクス(英:logistics)とは、原材料の調達から生産、販売に至るまでのモノの流れ、またはそれを管理する過程を指します。 より具体的には、顧客の要求を満たすために、モノやサービス、関連情報を効率的に計画、実施、管理するサプライチェーンプロセスの一部です。

※2 サプライチェーンマネジメント(SCM)
サプライチェーンマネジメント(SCM)(英: supply chain management)とは、原材料の調達から製品の製造、流通、販売、そして最終的な消費者に製品が届くまでのプロセス全体を最適化し、効率的に管理する経営手法です。

※3 オペレーションズ・リサーチ(OR)
オペレーションズ・リサーチ(米英: operations research)、略称:OR)は、現象を抽象化した数理モデルを構築し、モデル分析に基づいて種々の問題、とりわけ意思決定問題の解決を支援する方法論や技法の総称です。
ORはもともと、第二次世界大戦中にイギリスが軍事研究として使ったのが始まりとされ、人間の行動のシステムの運営上最も効率のよい方法を捜し出す科学的な手法で、統計的手法や確率論的考え方がベースとなっています。

※4  ESG経営
ESG経営とは、環境(英:environment)、社会(英:social)、ガバナンス(英:governance)の3つの要素を重視する経営方法です。目先の利益だけでなく、環境や社会への配慮、健全な管理体制の構築を通じて、持続可能な発展を目指す経営をすることです。

※5 VUCA
VUCA(ブーカ)とは、(英:volatility)・変動性、(英:uncertainty)・不確実性、(英:complexity)・複雑性、(英:ambiguity)・曖昧性という4つの単語の頭文字をとった言葉で、目まぐるしく変転する予測困難な状況を意味します。時代の先の読めない環境下では、既存の戦略では対応できないことも増えており、経営戦略の変更やビジネスモデルの変革が必要になります。

[プロフィール]
竹田 賢(たけだ けん)
青山学院大学経営学部 教授


1968年2月 愛知県知立市生まれ
1991年3月 青山学院大学 理工学部 経営工学科 卒業
1993年3月 青山学院大学大学院 理工学研究科 経営工学専攻博士前期課程修了
1993年4月 青山学院大学 非常勤助手
1996年3月 青山学院大学大学院 理工学研究科 経営工学専攻博士後期課程退学 所定修了年限満了
1996年4月 青山学院大学 理工学部経営工学科 助手
1999年4月 青山学院大学 経営学部経営学科 専任講師
2000年7月 博士号取得
2001年4月 青山学院大学 経営学部経営学科 助教授
2007年4月 青山学院大学 経営学部経営学科 准教授
2009年4月 青山学院大学 経営学部経営学科 教授(現任)

[所属学協会]
日本経営工学会、日本経営情報学会、日本医療・病院管理学会、日本医療情報学会
[研究分野]
サプライチェーン・マネジメント、ロジスティクス、経営工学

※プロフィールは、取材日(2025年9月6日)時点の内容を記載しています。

★主な著書
『現代経営学 経営戦略論とその周縁』共同執筆
著者:岡山善政、井島宏幸、角田史幸、野田輝久、小島芳次、横山史生、結城史隆
出版社:八千代出版(2002年3月)
ISBN-13: 978-4842912356

『サプライチェーン・マネジメント-企業間連携の理論と実際-』共同執筆
著者:三村優美子、藤野直明、天坂格郎、飯塚佳代、坂元克博、西岡靖之
出版社:朝倉書店(2004年3月)
ISBN-13: 978-4254270099

『サプライチェーンマネジメント入門』
編著:曹徳弼、中島健一、竹田賢、田中正敏
出版社:朝倉書店(2008年9月)
ISBN-13: 978-4254270167

『企業の戦略実現力-オペレーションズマネジメント入門-』
編著:山口雄大、竹田賢
出版社:日本評論社(2023年7月)
ISBN-13: 978-4535540521 &kindle版