慶應義塾大学大学院
メディアデザイン研究科教授
岸 博幸
令和4年4月9日(土)、20回目となる土曜講座記念講演会を、開催いたしました。本記念講演会は毎年、同窓会のご支援のもと運営されております。今年度は講師として岸博幸氏(慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科教授)をお招きしました。以下、講演の概要をお伝えいたします。
政治経済分野での経験などを基に、わが国の現状及び中高生が今すべきことを講演された。日本は人口減少・高齢化などにより、ここ30年ほど経済が低迷しており、国際的な競争力が劣っていた。今はその状況から抜け出そうとしている、言わば時代の過渡期。時代の変わり目と言える理由は以下の三つ。
【1】二年半に渡るコロナ禍の影響により、これまでデジタル化が遅れていた日本で急速な構造変化が進んだ(例:遠隔で行われる授業や会議)。今後デジタル化はさらに進んでいくだろう。
【2】ロシアのウクライナ侵攻は数十年ぶりの大きな戦争であり、これは権威主義と民主主義の対立と言える。東西ドイツ統一の頃から進んできたグローバル化の見直しが起こりそうだ。
【3】日本はここ30年程デフレの状態が続いてきたが、インフレに転じつつある。今後日本経済は徐々に上向きになり、ある意味経済がノーマルな状態に戻っていくだろう。
では、この時代の変わり目を生きる現代の中高生がどのような能力を習得すべきか? まずは日々の授業で一生懸命勉強し、知識を増やすことが大切である。それに加え以下の三つの能力を高める意識を持つことが求められる。
【1】自ら問題を発見する力
授業では解決すべき問題を与えられ、正解もあるが、社会に出たら自力で問題を定義し解決する必要がある。
【2】Creativeな課題解決能力
自ら発見した課題をどう解決するか考え、実践する能力。ネットで検索できるような答えは独創的ではない。自分だけの創造的な解決法を考える。
【3】コミュニケーション能力
社会に出ると問題解決はチームで行う場合がほとんどである。その際相手と議論するためにはコミュニケーションが必要。
上記の三つの能力を高めるために以下の三つを意識しよう。
【1】自分の好きな分野を見つけてとことん極めて「オタク」になる。そして成功体験を積み重ねていくことが望ましい。世界を変えた偉人たちはオタクが多い。平均的に優秀な人は既存のものの改善を考えるが、オタクは斬新な発想ができ、大きな影響を与えうる。( 例:Apple のスティーブ・ジョブズやDyson のジェームズ・ダイソン)
【2】スマホを使いすぎない。
現代の中高生のスマホ利用時間は極めて長い。長時間スマホと触れていると、発想がcreative でなくなってしまう。スマホに触れる時間と触れない時間を明確に分けることで、自らの脳で考える時間を作ることができる。
【3】親孝行をする。
自分に最も近い親や家族を幸せにできない人間は、世の中を幸せにすることはできない。若者には無限の可能性がある。それを開花させられるかは皆の努力次第。今から5年後、10年後自分がどうなっていたいかを考えよう。